細菌や真菌の感染によって起こる恐い弁膜症について解説します。

5. 感染性心内膜炎について

 心臓の内部に細菌や真菌が感染して、弁膜が障害を受ける病気です。菌の感染経路としては、歯からが多く、虫歯や歯槽膿漏、抜歯の後などに菌が体内に侵入し、心臓内部で繁殖します。もともと弁膜症を持っている方や、心臓に生まれつき穴が開いているなどの「先天性心疾患」の方がかかりやすい病気です。

 初期の主な症状は、高熱です。弁膜の障害が進めば心不全症状が現われます。また、菌の塊が弁に繁殖し、その一部が心臓から全身の血管に飛ぶことによって、さまざまな症状を呈します。脳血管に飛べば、脳塞栓を起こし、また飛んだ先で菌が繁殖して動脈瘤となることがあります。腎臓に飛べば腎梗塞、脾臓に飛べば脾梗塞を起こします。手足の先まで飛ぶことも多く、皮膚に斑点が出てくることがあります。

 主な治療は抗生物質です。多くはペニシリンを大量に点滴します。弁膜の破壊がひどくて、心不全が進行するときに手術の適応となります。手術は大動脈弁であれば、人工弁置換術になります。菌による破壊が弁の周りまで進行している時もあり、「基部置換」といって、大動脈の根元を全部取り替えてしまう手術を行うこともあります。僧帽弁の場合は人工弁置換術か、場合によっては弁形成術になります。

 手術の時期は、高熱が出ている急性期は出来るだけ避けたほうがよく、安全性が高くなります。しかし、弁の破壊による心不全のコントロールがつかない時は急性期に手術を行いますが、死亡率は高くなります。