左室形成術ついて概略しました

左室形成術について(ドール手術、他)

 心筋梗塞により生じる合併症のひとつに「心室瘤」という病態があります。これは、壊死に陥った心筋が時間経過とともに徐々に薄く、「干からびて」しまい、動かなくなった結果、今度は逆にその部分だけ外側に膨れてしまった状態のことを言います。

 動脈瘤と違って破裂することはありませんが、その部分が心臓としての役割を果たしていないため、心不全の原因になります。また、内部に血栓が生じて脳梗塞などの原因になります。

 したがって、心室瘤は手術の対象となります。特に冠動脈バイパス術の必要がある場合は同時に手術を行います。それが左室形成術です。

 基本となる術式は、それを考案したモナコの高名な心臓外科医の名前をとって「Dor(ドール)手術」と呼ばれています。

      

 このドール手術の理論と方法を応用して、左室が大きくなってしまった重症心不全に対してさまざまな左室形成術が開発されています。

 小説や、映画、ドラマの題材になった「バチスタ手術」もそのひとつで、一時期世界的に脚光を浴びましたが、ある一定の効果が得られた反面、手術のリスクが高かったため、現在あまり多くは行われていません。