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2.心房細動の外科治療について さて、ここからが本題です。 心房細動を外科的手術で直すという治療は、前述のカテーテル治療より歴史が古く、これまでさまざまな方法が研究されてきました。米国ワシントン大学のCox先生という心臓外科医がその道の権威で、手技の改良を重ねた結果Maze(メイズ)手術という術式を考案しました。その後もMaze手術はいろいろな医師によりさまざまな改良が加えられてきました。日本では日本医科大学の新田医師がRadial法という術式を考案し、良い成績を発表しております。以下、それらのバリエーションをすべて含めて「Maze手術」と呼ぶことにします。 Maze手術は、高度な理論に基づく複雑な術式のため手術がきちんと出来る心臓外科医は少なく、また侵襲が比較的大きな手術のため、必要な患者さんも限られていました。現在の一般的な考え方として、他の心臓疾患に対して手術が必要であれば、同時に心房細動の手術を行うのが適しているとされています。つまり孤立性心房細動に対しては、手術の成功率や利益、不利益(手術の侵襲度など)を考慮するとあまり有益ではない、という意見が一般的になっています。ただし、最近ではさまざまな装置や技術の発達により、Maze手術が新たに見直され、症例によっては孤立性心房細動でも手術治療が行われるケースもあります。 他の心臓疾患でよくある組み合わせとしては、僧帽弁閉鎖不全症があって、それ自体が手術適応で、心房細動を合併しているパターンがあります。この場合、僧帽弁形成術とMaze手術が可能であれば、術後ワーファリンの内服が必要でなくなり、心臓はほぼ正常な状態になるわけです(僧帽弁形成術を行っても心房細動が残ればワーファリンを内服しなければいけない)。このようなケースでのMazeの手術は大変有益であると言えます。他には大動脈弁置換術や冠動脈バイパス手術を同時に行う場合などがあります。 ただし、心房細動が慢性的に何年も続き、その慢性心房細動のため左房が一定以上に拡大しているような場合は、Mazeを行っても不成功に終わることが多いとされ、手術前の評価は重要です。 複雑な手術ですが、そのしくみを簡単に説明すると、心房細動の元になっている(とされている)心房の部分や異常な電気の通り道を断ち切るという方法なのです。断ち切るためには、心房の壁を切って縫い合わせたり、凍結療法と言って心臓(心房)の内面に冷却装置のようなものをあてがって「焼灼=アブレーション」する方法が従来からのものでした。 最近では高周波による焼灼装置が開発、製品化され日本でも使用可能となり、これにより焼灼がより早く簡便に行えるようになりました。この装置を利用し、Maze手術を簡便化した手技が普及しつつありますが、侵襲が少ない反面、確実性に欠け(成功率が低い)、どこまで省略(簡便化)してよいかは議論が分かれるところです。 |
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