■中頭病院における研修の取り組み(特に心臓血管外科に関して)
<Wet labo(ウエットラボ)>
<アニマルラボ>


 さて、「Animal labo(アニマルラボ)」について説明します。
 これは研修医のみならず、心臓血管外科に携わる看護師、臨床工学技士の教育も兼ねて行いました。

 そもそも心臓血管外科の手術は外科医が単独で行えるものではありません。
 そこにはさまざまな職種の多くの人たちが関わっており、彼ら彼女らの実力と協力なくして手術を完遂させることは出来ません。
 その主なスタッフが看護師と臨床工学技士です。
(当サイトでもさんざん解説されている人工心肺(体外循環)は臨床工学技士が操作します)
 まさに「チーム医療」なのです。

 話を戻します。

 アニマルラボとはどんなものでしょうか?
これは実際に生きているブタを手術させていただく、という「研修教育の場」であります。
 さすがに院内にそのような動物の手術が出来る設備はありませんので、ある医療系企業の研究施設をお借りしました。
 動物愛護の観点からきちんと許可を得た手術で、獣医の方が管理している実験棟で行いました。
 実際の手術とほとんど同様の手順で、全身麻酔をかけた生体ブタに対して、今回は弓部置換術と冠動脈バイパス術を行いました。


右が筆者で、中央が外科後期研修医、左が手術室看護師。


後期研修医が左内胸動脈を用いた冠動脈バイパス手術を行い、それを指導しています。



手術器具はほとんど実際と同じものを使用します。



手術室看護師たちも真剣です。



弓部置換術は筆者(右側)が行いました。



実際と同様に循環停止下に行い、加温して心臓が拍動を再開するのを確認しています。


 このアニマルラボの意味合いは多く、
1.新しく認可された医療材料を実際に人間に使用する前段階としてシミュレーションすることが出来る。
2.普段は外科医しか見ることが出来ない部分を看護師にも見てもらえる。
3.普段は教える余裕がない事柄を看護師に説明出来る。
4.まだ体外循環の操作に慣れていない臨床工学技士に手技を練習してもらう。
5.通常はベテランの外科医しか行わない手技を研修医が経験できる
などなどが挙げられます。

 ただしWet laboの数倍の研修効果があるものの、特別な研究施設に赴かなくてはいけないこと、一頭の食用ブタを犠牲にするため、稀少な資源であり、動物愛護に関しては慎重に配慮する必要があることが留意点です。