中頭病院心臓血管外科へ
■低侵襲弁膜症手術
1.小切開僧帽弁形成術 2.人工心肺を用いない大動脈弁置換術

2. 人工心肺を用いない大動脈弁置換術 (TAVI, TAVR)

 大動脈弁の分野では、2013年に日本でもその方法が保険適用となった画期的治療法があります。それは人工心肺を用いないで大動脈弁置換術を行う方法で、大血管に対するステントグラフトに概念は似ています。太い管に、折りたたんだ特殊な人工弁(生体弁)を挿入し、その管を心尖部(下図)、あるいは足の付け根にある大腿動脈から大動脈弁にまでカテーテルで誘導し、管を通して人工弁を大動脈弁の部分に嵌め込むという手法です。

英語の略で、TAVI(たび)、TAVRなどと呼ばれています。

  

 この方法が可能であれば、胸骨正中切開で開胸して人工心肺下に(心臓を止めて)手術を行うのが困難な患者さん、リスクが高い患者さんにとっての大きなメリットとなります。

 具体的には、超高齢の患者さん(80〜85歳以上など)肺の機能が著しく低下した患者さん(閉塞性慢性肺疾患など)、以前に心臓の手術をしたことがある患者さん(「癒着」のため手術が難しくなります)などが対象となります。ただしこの治療方法には特殊な技術と設備を要するため、限られた医療機関でしか行われていません。こういった高度な治療の判断には心臓血管外科医の専門的知識が必須です。したがって、もしこの治療の対象ではないかと思われた(あるいは内科医などから勧められた)方は是非、地元の信頼できる心臓血管外科医の意見を聞いてみて下さい。