■循環器内科医と心臓血管外科医について
「カテーテル治療」の項で記載した通り、カテーテル治療を行うのは循環器内科医です。「インターベンショニスト=Interventionist」などと呼ばれることもありますが、これはあまり適切な表現ではないと思います。カテーテルしか行っていない循環器内科医という印象が持たれてしまうからです。もちろんそういった内科医がいないわけではありません。しかし、個人的は循環器内科の真骨頂は、心臓病全般に関する造詣の深さであり、心臓外科医にはない診断能力と、内科的治療能力にあると思います。
ある病院において、循環器内科医と心臓血管外科医が友好関係になければ、その病院の心臓病治療のレベルは高いとは言えないでしょう。
ただ、心臓血管外科はある程度規模が大きい施設か、専門性の高い施設にしか存在しないため、循環器内科はあるも心臓血管外科はないという病院も多く、そういった病院の循環器内科医は、近隣の病院の心臓血管外科をバックアップとして確保しているはずです。
そもそも治療の性質上、心臓血管外科を訪れる患者さんのほとんどが循環器内科を経由しているという事実があります。
経由するのが同じ病院の循環器内科であることも、異なる病院のそれであることもあります。
いずれにせよ心臓血管外科は循環器内科なくしては「仕事」が成立しないのです。
患者の流れが循環器内科→心臓血管外科ということはあっても、その逆は原則ありません。
我々心臓外科医が、あえて卑屈な言い方をすれば、「循環器内科様々」ということになります(別に卑屈になる必要はないのですが;)。
逆に、循環器内科で「手に負えなくなった」患者さんが心臓血管外科に紹介される事実から、循環器内科にとってなくてはならない存在が心臓血管外科とも言えます。
そういった関係が均衡を保っている病院は心臓病治療において優れていると評価出来ます。循環器内科医と心臓血管外科医が「ライバル関係」にあってはいけないのです。
確かに腕の悪い心臓血管外科医を抱えて苦慮している循環器内科医もいるでしょうが、
病院の総合的な実力として、どちらか一方(循環器か心臓外科か)が突出している状況は好ましいとは言えません。
循環器内科医が、同じ病院に心臓血管外科があるにも関わらず、あえてよその病院の心臓外科に患者さんを紹介することが恒常的にあるとしたら、その病院の経営者は直ちにその状況を改善すべきです。
もしかしたら循環器内科の判断が謝っている可能性もあるし、また実際心臓外科医の実力が劣っている可能性もあるからです。
しいてわかりやすい表現をするなら、その二者は
「持ちつ持たれつ」
「ギブアンドテイク」
でお互いに尊重し合う関係が適切ではないかと筆者は思います。
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