中頭病院心臓血管外科へ
■基本的な知識■
心臓の基本的な解剖や生理に関して説明します。また心臓手術の基本となる技術について説明します。
1. 心臓のしくみと働き

 1. 心臓のしくみと働き
 

 心臓は全身に血液を送るポンプの役目を果たしている重要な臓器のひとつです。

 心臓は4つの部屋からできていて、右と左、それぞれに2つずつの部屋があります(下左図)。さらに、それらの部屋とつながる太い血管があり、医学的にはこれらも心臓の一部として扱います。

 さて、血液の流れに沿って説明しましょう。まず、全身から血液が「右房」という部屋に戻ってきます。上半身からは「上大静脈」を通って、下半身からの血液は「下大静脈」を通って右房に入ります。右房から今度は「右室」に入ります。そして右室から「肺動脈」に送り出され、左右の肺にそれぞれくまなく行き渡ります。ここで血液はガス交換を受け「酸素化」され、今度は「肺静脈」を通って心臓の「左房」に戻ってきます。左房から「左室」に入った血液は左室の強い筋肉(心筋)の力によって「大動脈」に送り出されます。こうして大動脈から全身へと血液が送られるわけです。


 これらの部屋と部屋、あるいは部屋と血管の間に「」という構造があります。そしてこの弁は、血液が一定の方向に流れるために「」の役割をしているのです。心臓の中に主な弁は4つあり、右房と右室の間には「三尖弁」、右室と肺動脈の間には「肺動脈弁」、左房と左室の間には「僧帽弁」、左室と大動脈の間には「大動脈弁」があります。

 具体的にはどういう形で、どのような働きをしているのでしょうか。

例えば大動脈弁というのは、3枚の半月状の薄い膜からできていて、心臓が収縮したときに開き、拡張したときには閉じて血液の流れる方向を制御しています(下図)。


 一方僧帽弁というのはもう少し複雑な構造をしています。前側と後ろ側の2枚の膜(「前尖」、「後尖」といいます)と、それらを支える腱索と呼ばれる紐、そしてその腱索がつながる乳頭筋という筋肉から構成されています。心臓の拡張にともなって開き、そして収縮にともなって閉じます(右図)。

 左室からみると、入り口の扉が僧帽弁、出口の扉が大動脈弁となります。

 聴診器を胸にあてて心臓の音を聞くと、主にこれらの弁が閉じるときの音が聞こえてくるのです。